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トランスの原理



このページでは、コイルやトランスの基本構造や動作原理について記載しております。



コイルとトランス

コイルとトランス。
電気になじみがある人からすれば一般的に良く聞く電子部品の名称ですが、それらがどのような物でどのような働きをしているのかはご存知でしょうか。

初めてコイルやトランスの名前を聞いた人にも分かりやすいように、コイルとトランスの基本部分について述べたいと思います。


コイルとトランスの関係

まず初めに、コイルとは何でしょうか?
電線を棒にぐるぐる巻いたもの、といえばイメージができるでしょうか?

コイルとは、電子機器を動かす為に必要不可欠な「受動部品」の1つです。(「受動部品」とは外部からのエネルギーを受けて動作する部品のことを言います。)
コイルは「電気の3大受動部品」の1つに数えられるほど重要な役割を果たします。ちなみにコイル以外では「抵抗」と「コンデンサ」という部品が三大受動部品に該当します。


コイルは使用用途によって「コイル」、「トランス」、「インダクタ」と呼び方が変わります。そのため、「コイル」と「トランス」は同じ分類に分けることができます。同族とでもいうのでしょうか。これらは業務用、民生用を問わず電子機器全般に搭載されています。


次に、コイル等の代表的な役割を確認したいと思います。
主な役割としては以下の3点が挙げられます。


1.ノイズ除去

コイルは然るべき設計と配置をすることにより回路上で発生するノイズを除去するフィルターとして活用することができます。


2.電圧変換

トランスとして設計されたコイルは、配電盤(ブレーカー・コンセント)やバッテリーから供給される一次側の入力電圧を受けて、回路の下流に配置されている電子機器や電子部品を動かすのに必要な電圧に調整して出力する働きをします。

動かす電子部品に合わせてトランスが電圧を上げる「昇圧トランス」と、電圧を下げて出力する「降圧トランス」が存在します。


3.インピーダンス整合

インピーダンスとは交流回路(AC回路)における電圧と電流の比率で、単位にΩ(オーム)を用いて表現する「電気の流れ難さ」を意味する言葉です。コイルの使い方の1つに、電子部品間を行き交う電気信号が反射やエネルギー損失で電圧が変動しないように安定させる「インピーダンス整合」の働きがあります。電気的に上流の部品からの発生する「出力インピーダンス」と、下流にある信号を受ける部品の「入力側インピーダンス」を合わせることが可能です。


以上が、コイルの主な役割になります。

コイルは自身の構造及び他の電子部品(コンデンサ等)との組み合わせにより多彩な用途に応用できる無限大の可能性を秘めた部品ですが、適切な機能を得るためには複雑な計算式や搭載されるユニットにおいて長期間に渡る稼働に耐えられるかを考慮した設計が必要です。




トランス・コイルの基礎技術

ここではトランスとコイルに関わる構造の基礎について解説を行います。

電線をらせん状に巻いて、電線の両端に電池(直流電源)つなぐと、らせん状に巻いた電線の部分から磁力(磁力線)が発生します。これは皆様が小学校の理科の授業で習った「電磁石」の状態です。


改めての説明になりますが、電線をらせん状に巻いたものを「コイル」と呼びます。

下図の様にコイルの中に鉄心(鉄芯ではありません)が入ると磁力線が鉄心に集中します。鉄心は空気と比べて磁力線が流れやすい性質を持っているため、磁力線は鉄心に集中して流れます。


前述のようにコイルに電気を流すとコイルから磁力が発生しますが、逆に磁力線がコイルを通ると電気が発生します。 この2つの原理を利用したものが「トランス」です。トランスは磁力線がループする「ロ」の字型の鉄心に電線をコイル状に巻きつけて作製します。

また、下図のように直流電圧ではなく交流電圧を印加することで、鉄心には磁束(磁力線が束となり強力になったもの)が発生します。


続けて、下図の様に鉄心にもう1本電線を巻きつけコイルを形成すると、巻きつけたコイル(出力側)で電圧が発生するようになります。これがトランスの基本構造となります。


入力側のコイルの巻数を「Nin」とし、出力側のコイルの巻数を「Nout」とすると、入力電圧「Vin」と出力電圧「Vout」の関係は次の計算式が成り立ちます。


Vin=Nout/Nin×Vout


このような式をはじめ、形状、電線の太さ、材質、巻き方、用途など多くの要素を考慮しながらトランスは設計されています。



【休憩話】

*インダクタンスとヘンリー

コイルの性能を表現する用語として「インダクタンス」という単語があります。インダクタンスはコイルの電気的な大きさを示す言葉です。インダクタンスの単位にはH(ヘンリー)が用いられます。アメリカの物理学者であるジョセフ・ヘンリーの名前に由来した単位です。

1H(ヘンリー)の定義は、「1秒間に0A→1Aまで変化した電流をコイルに流し、1Vの起電力が発生した時のコイルのインダクタンス」です。但し、パワーインダクタや小型のトランスの性能を示す場合に1Hは大きすぎるため実際には1Hの1000分の1であるmH(ミリヘンリー)や100万分の1のスケールのμH(マイクロヘンリー)が用いられています。




トランスの種類と各説明

電気部品の業界では、「トランス」は用途に応じた名称を使い分けております。例えば「電源トランス」「パルストランス」「カレントトランス」というように分類されます。 ここからは、これら3種類のトランスの説明を行います。


1.電源トランス

電源トランスは、電源の入力回路に使われています。機械を動かすための供給電源を受けて下流の電子部品に必要な電圧に変換する役割を担います。 電源に使われる回路は大電力から小電力までの幅広し用途に対して、多様な回路方式と製品が存在します。中でも小型の電子部品に対し一般的に採用されやすい回路が「フライバック方式」の回路です。電源トランスを設計する上での頻度も多いため、特徴や構造など詳しく解説をして参ります。


フライバック(Flyback)回路は主に150W以下の小電力用途の回路に広く採用され、次のような特徴を有しています。


1.回路の絶縁機能

フライバック回路は入力と出力を電気的に絶縁ができるため、回路を制御する上での容易さと安全性に信頼性が得られます。落雷や電圧変動により瞬間的に高電圧が発生することがありますが、このような高電圧で出力側の機器が破損する恐れがある場合には、フライバック回路を採用することで電気的な絶縁が得られ機器を守ることができます。


2.構造的なメリット

フライバック回路は基本的に部品点数が少ない回路ですが、電源ICの進化により部品点数が更に減少しています。そのため製造コストを抑えつつ、省スペース化も成り立っていると言えます。


3.出力の安定性

フライバック回路では出力電圧を監視制御する専用ICが搭載されているため、安定した出力電圧を得ることができます。


フライバック方式の回路図



フライバック回路の動作原理は以下の通りです。


1.電源用ICの起動

SWスイッチをONにすると電源から入力のコンデンサC1およびR1に電流が流れ込みコンデンサC1両端の電圧が高くなっていきます。C1両端の電圧が既定の電圧に達すると電源用IC起動します。この時はトランスには電流が流れておりません。


2.FETの駆動

電源用ICが起動すると、電源用ICからFET Q1に方形波が出力されます。その方形波によってFET がONとOFFを繰り返します。


3.トランスの充電

FET Q1 がONするとトランスの1次巻線に電流が流れます。同時に2次巻線に同様に電流を流そうとしますがダイオードD1が邪魔をしてしまうため電流を流すことが出来ません。そのため、1次巻線に流れた電流はエネルギーに変換され一旦トランスに蓄えられます。


4.負荷側への出力

FET Q1 がON→OFFになるとトランスの1次巻線に電流が流れなくなります。 トランスの極性が変わりトランスの2次巻線側からダイオードD1を通って電流が出力されます。


5.FETの反復動作

FET Q1 がOFF→ONになると2次巻線から出力された電流が止まり、トランスの1次巻線に電流が流れトランスにエネルギー蓄えます。4と5の動作を交互に繰り返すことで入力の電圧を出力電圧に変換しています。



フライバック回路における出力電圧の制御


出力電圧の制御方法は負帰還(ネガティブ・フィードバック)が使われており、出力側の動きに対して入力側が反応し制御しております。制御方式には、いくつかの方式がありますが、一般的な「PWM方式」について説明をして参ります。
PWM方式はPulse Width Modulationの略で、ある一定の周期でFETをON-OFFさせて、周期が一定のままON時間を制御することで、電圧を一定にする技術です。 Voutを抵抗R2とR3で分圧した電圧と電源用ICの誤差Amp.(Error Amp)電圧Vrefと比較して制御します。


・Vref<R3/(R2+R3)×Vout 周期は一定のままON 時間を短くする

・Vref>R3/(R2+R3)×Vout  周期は一定のままON 時間を長くする

この2つの動作を常に制御しているため、出力電圧が一定になります。




2.パルストランス

パルストランスは主に通信機の信号伝達と保護に使われます。代表的な使用例としては、ルーターとハブ(HUB)等の通信モジュールのLANケーブル間に配置されたものが挙げられます。
信号伝達の役割においては、パルス波形の信号を送信側から受信側に信号を伝えます。パルストランスの設計がしっかり行われていない場合、信号が歪んでしまい、間違った信号が受信側の機器に流れ機器の誤動作を誘発するようなことが起き得ます。
保護機能としては、例えばルーターの回路でトラブルが起きた場合、通信ケーブルに異常な電圧が乗ってしまうようなリスクが発生しますが、パルストランスがあることで機器を異常電圧から守る役目を果たします。下図で例えると、ルーター等の送信側機器が何らかの原因で破損した場合、回路上で異常電圧が発生することがあります。異常な電圧がLANケーブルを伝って、受信側のハブに流れるリスクがありますが、パルストランスによって通信モジュールは保護されハブが守られる効果が期待できます。



3.カレントトランス

カレントトランスは、交流の電流を検出する用途で使われています。日本語では「変流器」とも呼ばれています。
カレントトランスの構造は下図の通りです。


電線に交流の電流が流れると環状の磁性体に磁束が発生します。磁束がコイルに鎖交することによって、コイルの巻き数と電線に流れている電流に応じた電圧が発生します。この原理を使って、電流を電圧に変換し、微小電流から大電流まで幅広い電流値の測定に活用されています。
但し、大電流向けの用途の場合には、磁性体のサイズが大きくなるため、用途に合致したカレントトランスを選定または設計することが必要があります。


【トランス休憩話:トランス製作の難易度と材料】

安定性のある安全なトランスを製作する際、技術者は様々なノウハウや材料知識を駆使してトランス製作に臨みます。

かく言う筆者(社内で特訓中です)はトランス製作を難しく考えていなかった時期があり、弊社のトランス技術者から「トランス製作は難しいよ」と言われても、ピンときませんでした。

実際にトランスの製作方法や過程、配慮事項等を伺い、実地訓練を受けすぐにその考えは変わりましたが…。


基本的な製作方法はあるものの、実際は形状や設計によって作り方が全く異なるので、作り方は無限大です。そのため、トランスを理解するのはまだまだ修練が必要そうです。


ただ、そんな筆者でもすぐに理解できたことがありました。

「どの材料を組み合わせるかにより、性能も大きく変わってくるため、組み合わせはとても重要」だという点です。

用途により使用する材質は異なりますので、その部分を間違えると理想とは異なるものが出来上がってしまいます。


トランスには専用の材料があるため、その材料を組み合わせて製作しましょう。

トランスは勿論のこと、周辺部品に関しても可燃性の材料は絶対にNGです。

トランスは設計によっては発熱しやすくなるため、例え絶縁していたとしても熱で不良になることが多々あります。場合によっては、出火などの原因にもなりますので、必ず不燃性のものでトランスの発熱に耐えられるものを選定しましょう。



※本ページ「トランスの原理」の内容については適宜追記及び更新を予定しています。

※トランスやコイルの設計・製作に関しては、弊社までお気軽にお問い合わせください。


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