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ヘリウムリーク検査は気密試験の手法の1つです。
検査対象の内部を真空に減圧するか、ヘリウムを加圧した上で、専用の検査機である「ヘリウムリークディテクタ」を用いて漏れの有無とその程度を調べます。
ヘリウムリークディテクタは、ヘリウムガス(He)をトレースガス(検知ガス)として微小な漏れ(リーク)の有無や大小を調べることができる検知機(ディテクタ)です。
ヘリウムリークディテクタは以下の特徴があげられます。
・ナノレベルの隙間の漏れを数秒以内に検知し、リークしている場所の特定ができる
・リークの程度は国際単位系(SI単位)で定められている「Pa・m3/s」で定量的に把握できる
・非破壊検査装置である(サンプルが壊れる圧力差を生じさせない前提)
・検査対象を真空にする方法と、ヘリウムガスを封入して検知する方法の両方に対応
ヘリウムリークディテクタは一般的に「Heリークディテクター」や「ディテクター」「ヘリウムリーク」といった表記や呼称で半導体産業をはじめ電子デバイス、精密機器、自動車、水素エネルギー、食品産業などにおける密閉性が求められる設備や部品、そしてガス配管などのリークテストを必要とする現場で活躍する真空技術を応用したガス分析装置の一種です。数ある漏れ検査の手法のうち、水没法やエアーリークテストでは検出できない小さな漏れの有無を調べることができるため、様々な分野の漏れ検査のニーズに利用されています。
機械の仕組みをできるだけシンプルに説明すると「極微少なヘリウムガスの検出に特化した、ターボ分子ポンプを搭載したガス分析装置」とも言えます。
代表的な検査方式の「真空法(真空スプレー法)」の概要を説明すると、まず密閉構造の設備や容器や配管の内部をリークディテクタが搭載する真空ポンプまたは、別置きの真空ポンプで所定の圧力まで減圧するところから始まります。
リークディテクタが内蔵する真空計の読み値で、所定の圧力(メーカーや機種により絶対圧で500Pa~2500Pa程度と違いがあります)以下に減圧が進むと、分析管を仕切るバルブが開かれてサンプルと分析管が繋がり検査/測定のモードに切り替わります。続けて、検査サンプル対象に向けて、ヘリウムガスを外側(大気側)からスプレーする作業を行います。この時に例えば溶接部にクラックがあったり、シール面に傷や異物が挟まってリーク(漏れ)があったとすると、スプレーによりリークポイント付近に拡散したヘリウムガスの一部が隙間から真空側に吸い込まれ、配管を伝ってリークディテクタの分析管に流れ込み、ヘリウムの成分(実際にはヘリウムイオンの量に応じた電流値)を検出します。
ヘリウムリークディテクタの分析管は、起動中はターボ分子ポンプによって常に-3乗Pa以下の高真空の状態に減圧されています。サンプルのリークポイントからは、ヘリウムガスの他にも窒素や酸素、湿気など様々なガス成分が真空の差圧で入り込んでいますが、分析管は「磁場偏向型質量分析計」という方式の構造で、介在するガスを質量数でフィルタリングすることができます。つまり質量数4のヘリウムのイオン電流値だけを検出することが可能となります。
その検出した微小なイオン電流値の大小を10桁にも及ぶ「リークレート」という漏れ量を示す数値に変換し、表示パネル上に表示をしています。ヘリウムの成分が分析管内に留まっている間や、ベースの圧力が高い環境ではリークレートが高く表示され、ターボ分子ポンプにより排気が促進し分析管からヘリウムが抜けるまたは、サンプル表面が枯れてアウトガスが減少するに従ってリークレートは下がる(小さくなっていく)という挙動を示します。
表示パネル上で見るヘリウムの反応時間は、リーク元とリークディテクタの配管距離や、ピンホールリークかネジ山を伝ったり樹脂を透過するような反応の遅い漏れなのかによって異なりますが、短距離のピンホールリークの場合は早くて1秒以内、吹きかけたヘリウムが分析管から排出されるのに数秒から数十秒という間隔でリークレートが推移します。このためヘリウムを吹きかけた部位に対して、高精度かつ高レスポンスで定量的なリーク検査をすることができます。
10ミクロンの異物が挟まった時のリーク状況
これは限定的な測定条件が整った時の例えですが、弊社が保有するヘリウムリークディテクタ「ASM310」が表示する「1.0×10E-12Pa・m3/s」という数値は、1秒間に1立法メートルの空間が0.000000000001Paずつ昇圧するレベルの漏れ量であることを意味します。実際にヘリウムをスプレーしても反応が全く無いのであれば、この水準のリークレートでの漏れは存在しないことを意味します。
漏れ量のSI単位でもある「Pa・m3/s(パスカル・リューベイ・パーセック)」は流量の単位であり、「cc/min」「ccm」に換算することが可能です。前述の「1.0×10E-12Pa・m3/s」を「cc/min」にすると「5.92の10の-10乗cc/min」相当の流量になります。表現上、分かりにくいため言い換えると、1分間における漏れたヘリウムの流量は0.000000000592ccとなります。この数値を1年間の時間に換算したとしても0.00031cc/年しか漏れていないという意味合いになり、通常の判断では、これは漏れていないと判断できます。
ヘリウムリークディテクタが示すリークレートについて、数値が安定している状態でヘリウムを散布しても反応が無い場合は「漏れなし」または「リーク量 〇.〇×10の-〇〇Pa・m3/s以下」という表現をして検査を合格と判定することができます。
ちなみに検査に用いるヘリウムガスは質量が4で分子直径は凡そ0.21ナノメートルの単原子分子です。分子が2つから構成される水素(H2)の約0.27nmよりも分子直径が小さいガスであるため、差圧が生じている部位に微小な隙間があれば簡単に入り込んでしまう特徴を有しています。昨今開発が進む水素エネルギーに関連した設備や部品の製造時の検査でもヘリウムが漏れないことが分かれば水素も漏れないと言えます。
また地表の空気中に漂うヘリウム濃度は5.2ppm(0.00052%)と微量かつ濃度が安定しているため、この少ないベースに対しプラスで検出されたヘリウムの反応は、リークポイントに由来するものだと判定できることから極めて小さな漏れに対する検査が可能と言えます。また、検査機の機種や設定によっては大気の5.2ppmを基準にした感度校正を行うことで、校正リークガス管を使った感度校正を行わずとも、感度の信頼性を確認できる機種が存在します。
ヘリウムはこの特徴に加え、空間に大量に散布しても上空に向けて拡散していく特徴や、人間が吸引しても人体への悪影響が酸欠以外は挙げられない点、不活性ガスであるため検査対象や使用している材料と化学的反応を起こしにくい点、分子が分解しない安定性、ガスの入手が容易であること、水素ガスを用いるリーク検査と比較して法律や安全基準の観点で規制や制限の少ない点など、地球上に存在するガスの中で、漏れ検査をする目的には最も適したガスと言えます。
ヘリウムリーク検査と検査機のメリット・デメリットの一例は以下の通りです。
・極めて微小な漏れの有無が分かる
・ヘリウム使用後のリークの検出に要する時間が短い
・定量的に漏れ量が認識できる、他の製品と漏れ具合の比較もできる
・リーク場所の特定が可能(検査方法によっては特定できない場合あり)
・検査品はヘリウムによって劣化することはない
・トレーサーガスであるヘリウムは比較的安全な部類のガス
・検査結果に対する信頼性が高く、多くの企業で認められている 等
・検査機の導入費用が高い
・微小リークの検査ゆえ、検査上の注意事項、留意点が多い
・高感度を維持するためには検査機の定期的なメンテナンスが必要
・感度校正をしっかり行わないと、検出した数値に対しての信頼性が担保できない
・検査機の使用方法を間違えると即故障、修理費が高額
・起動中の検査機は振動、衝撃に弱い
・異物の吸引に対して弱く、細かい粉体等もNG
・真空法の測定中に大気突入や急激な圧力上昇が起きると検査機が壊れる
・有機溶剤やアウトガス成分の吸引で分析管のフィラメントが劣化しやすく感度が落ちる
・検査テクニック、ガス・リークに対する知識、真空技術の把握など専門性が必要
・ヘリウムは100%輸入品で、その時の世界情勢によっては入手困難になる場合がある 等
上記で述べたように、より正確な検査を行うには様々な取扱上の注意があり、非常に手間と費用がかかります。トラブルが起きないように事前に検査品に対して検査を実施しても問題ないかを細かく確認する等、しっかりとした準備が必要です。
初めてヘリウムリークディテクタを使用する方は詳しい方にレクチャーを受けてから使用されることをお勧めします。
このように取扱上注意が必要な検査ですが、一方でヘリウムリーク検査がもたらす検査結果は非常に明確で信頼性があり、弊社が行った検査でその効果を実感された方が多くいらっしゃいます。ヘリウムリークディテクタのデメリットやリスクは正確に理解した上で機械を使いこなせば、品質の高い信頼性ある「ものづくり」が実現します。
小話:ヘリウムリーク検査の現場
「微細な穴を見つけるからこそ、難易度が高いヘリウムリーク検査」
ヘリウムリーク検査では、微細な漏れを見つける事が可能ですが、それには大きなハードルがあります。
例えば真空法での検査の場合、正確な測定を目指すとなると、検査該当箇所に加え検査該当箇所以外の漏れも考慮しつつ検査を行うことが求められます。
ヘリウムガスは非常に軽く拡散しやすいため、検査該当箇所以外の隙間から入り込んで、正確な結果を得られなくなることが多々あります。
そのためには、検査にあたり自社の検査配管や治具のチェックは勿論のこと、検査品の様々な情報を把握したりするなど、それ相応の準備が必要で「段取り八割」の格言をリアルに体感しています。
弊社の場合は、確認できる漏れのレベルがμmオーダーと微細であるため、単純な検査であっても、最適な検査方法を検討し、事前調査や準備をしっかり行っております。
製品や検査内容によっては1回勝負の検査や、簡単そうに見える検査品が1日がかりの検査になることも・・・。
いろいろと考慮することはありますが、得られる情報はとても貴重なデータのため、研究や製品のチェックに欠かせない検査として日々活用されています。
弊社では複数メーカーのヘリウムリークディテクタ販売や様々な受託検査・レンタルニーズに対応した経験を基に、ヘリウムリークディテクタの導入を検討されているお客様へ目的や条件に応じた機種の選定及びオプションの組み合わせの提案と販売を行っております。
選定においては次の条件を基に選定致します。
・検査対象の形状、稼働時間や検査数量
・検査方式(真空法・加圧法・その他)の判断
・合格/不合格の基準となるリークレート値
・検査環境及びオペレーターに関する情報
・持ち運び頻繁な輸送の有無
・お客様のメンテナンスに対する考え方
・ご予算、ご希望納期
・その他の要素
また、現在ご使用中のヘリウムリークディテクタに関しましても、メンテナンスや効率等のお悩み事がありましたら、何かしらコメントできる可能性がございますのでお気軽にご相談ください。
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